SONY ウォークマンと私

いつの時代もSONYの新商品はオーディマニアである我々を魅了してきました。その中でも特に興奮を覚える瞬間がある時があります。それが全く新しい規格の商品が発表になった時です。そんな世界に誇る日本企業SONYの歴史は輝かしいものです。日本初のテープレコーダーやトランジスタラジオから始まり、世界初となるビデオテープレコーダーを発売するなど、新企画の発表のたびに我々オーディオマニアを驚かせていたものでした。
その結果や実績はどうあれ、我々は新たな時代の幕開けだと信じて疑わなくなっていたのです。

そんなSONYが世界中に一番センセーショナルな商品を提供したといわれているのが今回ご紹介する「ウォークマン」シリーズです。
一口に”ウォークマン(WALKMAN)”といっても種類が多岐にわたるので、ここでは主に時代を席巻したシリーズを中心に記載していこうと思います。
少し長くなりますが、どうぞお付き合いのほどよろしくお願いいたします。

音声を残すということ

肝心なウォークマンを語る前に”音楽メディア”についてお伝えしておこうと思います。

そもそも今では当たり前の事である、”音楽を好きな時に聞く”という行為は今からおよそ2世紀前にやっと叶ったと言えます。つまり音(音楽や声)を記録(録音)する発明があったからこそ実現したと言えるのです。”音を録音する”という行為はとても簡単に言うと、過去に流れた音(音楽や声)を現代に再び再現できる仕組みがあって実現されます。そしてそれを可能にする装置(機械)の発明があったからこそなし得る事実と言えるでしょう。
そしてその記録する媒体のことを通称”音楽メディア”と言い、のちに続く音声フォーマットが生まれた瞬間であると私は検証いたします。

世界初の音楽メディアと呼ばれているのが皆さんもご存知のレコード盤だと言えます。このレコード盤の元祖は時を遡ること1877年、発明王エジソンが蓄音機を発明したことから端を発します。

かの発明王として有名な「エジソン」が発明した「蓄音機」は、皆さん歴史の教科書などでご存知かと思います。この時のエジソンの発明は、薄い金属箔を取り付けたシリンダーをハンドルやギアを使って回転させ、角笛のような部分から音を吹き込んで”録音”するものでした。振動が針を動かし、金属箔に音を物理的に記録(書き込み)したものでこれが皆さんが教科書などで知った「録音の始まり」と言われているのです。
しかし実際のところ、我々がよく知る”ドーナツ盤のレコード”といわれる丸い形状ではなく、エジソンのそれは実は筒状だったのです。この事は意外と知られていない事実であります。今に繋がるレコード盤の基礎を発明したのは他の人の発明だったのでした。

それから時を経てからは、音楽の再生の装置はもっぱらレコードであったといえます。様々な技術の革新により再生装置が徐々に小型化していったレコードではありますが、一般的には持ち運べるほどの大きさではありませんでした。それもそのはずで、そもそもレコードメディアの大きさには小型化の限界があったからなのです。しかも一般的にはレコードには音楽を録音する機能は備わっていませんでした。

時は経て1970年代のはじめ遂に小型化の新メディアが生まれました、それが今回のテーマであるウォークマンのスタートである音楽メディア「カセットテープ」です。この新規格の登場により、人々は自分で好きな音楽を簡単に再生・録音ができるようになりました。しかも持ち運びに適したサイズの実現も達成していました。もちろんそれまでも音声用のテープ装置はありましたが、レコード同様これまた大掛かりな装置により、とても持ち運べるまでの大きさにはなってはいなかったのです。その後この小型で軽量なカセットテープが爆発的に普及していきました。

このコンパクトなカセットテープの登場により、人々は多少装置は大きいがリビング以外でも音楽を持ち出して楽しめる機会を手に入れました。
しかも今まで放送中しか聞けなかったラジオの内容を手軽に録音し後にも残すことができたのです。
録音された音楽を聞くだけでなく、自分で簡単にレコードなどからの録音も編集もできるようになりました。つまりミックステープ時代が幕開けでもあったのです。

広くパーソナルになったこのカセットテープ装置はアメリカなど若者文化を中心に、大音量で音楽を再生できるデバイスとして70年代半ばに人気を集めるまでに至り、瞬く間に世界に広がっていくことになりました。

☆初代ウォークマンの誕生そしてカセットテープの時代の幕開け

時は流れ1970年代後半にはついにカセットテープはレコードの売り上げを上回り始めました。カセットテープ時代の幕開けです。そしてSONYがカセットテープを使った新しい試みを1979年から始め、それがこれから紹介する初代ウォークマンと言われる『TPSーL2』です。

tps-l2

この『TPS-L2』のエモーショナルな点は以下の通り。

・スピーカーと録音機能を不採用
・ヘッドホンでのみ音楽を楽しめる
・音を聴かせる対象が完全に個人(パーソナル)になった
・ヘッドホン端子が2人分用意
・ポケットにも入りいつでもどこでも音楽を楽しめる
・バッテリー付きで電池交換すれば何時間でも使用可能

元々は業務用機材「プレスマン」の部品を使い企画を練り直して発売されたものでしたが、上記の機能が若者を中心に瞬く間に日本で大ヒット、その後世界中でも広がりを見せるのでした。結果としてこの機種はトータル400万台もの販売実績を残しているのです。
なお実はこの時我々が良く知るウォークマンの名前では発売されてはいないのです。(画像はウォークマンを名乗り始めた後期型)

『TPS-L2』はポータブルオーディオの祖として人々の心に永遠に残り続けているのは事実です。
後々語られるCDやMD、メモリーオーディオの機器の原点にして完成されていました。

心に残る(^^)カセットテープ・ウォークマン

ここからは各メディアの名器達をご紹介したいと思います。
多くは私が所有している機種達なので使用感のある画像なのはお許しください。

①TPS-L2(1979年発売)

TPS-L2

解説:シリーズ最初のモデルです。事前に発売した法人向けモデル「プレスマン」の部品を流用した構造となっています。
今となってはシンプルなボディに多彩な機能を集約しています。例えばボリュームが左右別だったり、ヘッドホン端子が2つあったりと今の基準では考えつかない装備が付いていました。

また、ホットラインボタンという面白い機能がついているのも特徴です。オレンジのボタンを押すと、テープの音量が下がり、マイクで周囲の音を拾ってくれます。これはカップルがお互いの会話をヘッドホンで拾い会話ができるという機能でした。今考えるととってもおしゃれな機能だと思います。

②WM-20(1983年発売)

解説:ボディサイズを小さくしだした頃の意欲作です。本体だけだったらカセットテープサイズを実現していました。テープの動きや残量を一眼で確認できる窓も大きくデザインされていました。

③WM-101(1985年発売)

解説:もっともっと小さくするためガム電池が採用(本体の外側)されました。ここからウォークマンにはガム電池が主流になります。

④WM−501(1987年発売)

解説:さらに小さくするためにガム電池を本体側に内蔵し、小型化を実現しました。

⑤WM-701S(1989年発売)

解説:200台限定のウォークマン10周年記念モデルです。WM-701Cをベースに銀メッキ仕上げで高級感を演出していますね。

⑥WM-EX1(1994年発売)

解説:ウォークマン15周年記念モデルです。クロームメッキ仕様の限定バージョンも登場しました。

⑦WM-WE01(1999年発売)

カセット ウォークマン WM-WE01

解説:ウォークマン15周年記念モデルです。Bluetoothのはしりとも言えるワイヤレスリモコン&ヘッドホン採用しています。

⑧WM-EX9(1998年発売)

ポータブルオーディオ SONY WALKMAN WM-EX9

解説:省電力&薄型のハイグレードウォークマンです。連続再生時間は驚異の96時間でした。

⑨WM-DX100(1991年発売)

カセット ウォークマン WM-DX100

解説:ドルビーCを搭載した通称プロフェッショナルウォークマンです。

⑩WM-DD(1989年発売)

解説:ダイレクトドライブシリーズの最高峰と言われます。回転が安定し常に良い音を提供するのです。

⑪WM-F30(1983年発売)

SONY WALKMAN WM-F30 カセットプレーヤー シルバー

解説:歴代のFシリーズはチューナーを内蔵しているモデルになります。AM/FMラジオだけではなくTVチューナーがついているモデルも多数でした。

⑫WM-F107(1985年発売)

WM-F107

解説:アクティブユーザー向けシリーズになります。開閉機構にパッキンを設け防水仕様にしてあり、加えてこのモデルはソーラーパネルで充電可能です。

⑬WM-150(1988年発売)

解説:CMはお猿のチョロ松が演じていました。ドルビーCを採用しています。

⑭WM-504(1987年発売)

カセット ウォークマン WM-504

解説:本体のフタが透明で中のカセットが見える仕様です。デザイン性抜群でしたね。

⑮WM-EQ2(1996年発売)

解説:通称ビーンズウォークマンです。奇抜なデザイン重視の変わり種シリーズと言われています。

現在:カセットテープの音の特徴が見直されている

実はカセットテープのサウンドはCDよりも良いと言われています。これは結構聞く評価でして実際聴き比べてみるとわかりますが、CDに比べ音が全体的にクリアで繊細に聞こえるのです。

その秘密はとてもここでは説明しきれないぐらいの内容ですが、大きな要因はデジタルとアナログの特徴があらわれています。デジタル音源(CD)は人間の耳には聞こえない高周波&低周波の箇所を取り除いて収録されています。要はデータ節約のため不要な部分を排除しているのです。

一方レコードやカセットメディアはアナログ方式に録音されています。音域には関係なく音源の全てを聴く事ができるのです。
人間は耳に聴こえない周波数の音も、”音”として認識しているようです。それが、音本来のなまなましさや迫力となって、とても聴きやすい音として感じるそうです。

生の楽器の音を目の前で聴くか、YouTubeで聴くかぐらいの違いでしょうか。

☆CDウォークマン。新しいメディアの誕生。

SONYはカセットのウォークマンの成功に飽き足らず次の新音楽フォーマットを登場させました。それが今でも新品がリリースされているコンパクト・ディスク(CD)です。
ことの始まりは1979年、コンパクト・ディスク、いわゆるCDがフィリップスとソニーの会議から生まれたときです。小さくて薄く、約74分の音楽を持ち運びできるのも魅力でした。CDはそのコンパクトさと音質の良さから徐々に普及し始めていました。ついに1988年にはレコードを、1991年にはカセットテープを抜いていきます。CDの販売ピークは2000年、世界中で約25億枚のCDが売れました。

この数字からSONYがメディアの世代交代に成功したことは明らかです。
そんなCDを普及させたコンパクトCDプレーヤーに僭越ながら記していきましょう。

心に残る(^^)CDウォークマン/ディスクマン

①D-50(1984年発売)

D-50

解説:世界初のポータブルCDプレーヤーです。

②D-50MkⅡ(1985年発売)

D-50MKII

解説:初めてディスクマンの冠をつけたモデルになります。

③D-150(1988年発売)

D-150

解説:この頃バリエーション豊かなディスクマンが次々に誕生しだしました。

④D-88(1988年発売)

D-82
画像は後期のD-82

解説:8センチシングルCDサイズのコンパクトディスクマンです。

⑤D-120(1993年発売)

D-120

解説:1bitのDAC(デジアナコンバーター)を搭載しています。原信号に対して忠実な音の再現が可能です。

⑥D-202(1991年発売)

D-202

解説:マルチビットDACを搭載しています。ポータブルであっても音質に拘るモデルが誕生しました。

⑦D-465(1996年発売)

ディスクマン D-465

解説:音飛び防止機能ESPを搭載しています。ホールドシャッターが特徴的でした。

⑧D-131(1995年発売)

解説:低温を引き立たせるBassBoost機能を搭載し、アナログアンプも採用されましたね。

⑨D-Z555(1989年発売)

D-Z555

解説:ディスクマンの最上位機種です。機能や音質も当時の水準を凌駕していました。

⑩D-601K(1987年発売)

SONY D-600 カーディスクマン

解説:カーディスクマンです。初の自動車用用CDプレーヤーで車両取付用のアームが付属しています。

⑪D -E305(1997年発売)

ディスクマン D-E305

解説:最後のディスクマンです。デザインはホームベースのようですね。

⑫D -E01(1999年発売)

CD ウォークマン D-E01

解説:15周年記念モデルです。側面からCDを入れるスライドインディスクを採用していました。

⑬D-EJ888(2000年発売)

CD ウォークマン D-E888

解説:業界最長の連続再生80時間を達成したモデルです。デザインもSONYらしい奇抜なものでした。

⑭D-NEシリーズ(2000年発売)

CD WALKMAN D-NE9

解説:「ATRAC CD MP3」規格の再生に対応しています。デジタル・オーディオへの移行期間の商品です。

⑮D-NE241(2010年発売)

CD ウォークマン D-NE241

解説:CDウォークマン最後の商品です。ACアダプターが付属され、はじめから家での使用を想定されていました。

現在:日本ではまだまだ人気のCDメディア

近年レコードに販売本数が抜かれて衰退しかかっていたCDですが、日本ではまだまだ人気のメディアです。多くの歌手やミュージシャンは録音した音源をCDにプレスするのは、何と言っても価格の安さが魅力です。なお現在発売されているレコードの多くは決まってCDよりも高価であり、その差額も年々上がっています。

レコードがそうであるように、CDのジャケットは見ていて楽しいし、何よりも集める喜びも味わえます。自分のCDラックに同じ大きさのCDをシリーズごとに並ばせる、コレクターではなくても見ていて気持ちが良いものがあります。

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